あー、明日バレンタインなんですね。
とにかくこの日には無縁でして。
中学時代、好きだった子からの「義理チョコあげようか?」というお誘いも突っぱねたという筋金入りのシャイボーイなもんでして。
もう、義理とか友とか逆とか意味わかんない。
義理チョコ貰ったら義理を返すのが筋。
例えば中学時代の話だとすれば、俺が義理チョコを貰った日、俺たちの学校にチェ・ホンマン・ド・チョコラッテが現れた。
バレンタインに見放された男達の強力な怨恨が意識体として具現化し、恋人の日に浮かれきったボーイズ&ガールズを粛清しようとしていた。
その地獄の底から聴こえてくるかのような怨嗟の声は高速のカマイタチのように周囲を襲う。
あっという間にカマイタチに包まれた2組の谷君は南海キャンディーズの山ちゃんのような髪型にされてしまった。
そのチョコの行き先が注目されていた6組の岡本さんはキューティーハニーの変身シーンみたいになってしまった。それはそれでありがとう。いや、むしろ超ありがとう。
そして今、怨嗟のカマイタチは止まることを知らず、俺の好きな子に照準を定めた。
やめろ!と言うが早いか俺は駆け出した。
アノ子がキューティーハニー・・・アノ子が・・・アノ子が・・・
想像豊かな中学生。アノ子の窮地を考えるだけでスピードが30%落ちた。
そんな俺の苦悩も知らず、カマイタチはアノ子まっしぐら!
その手には・・・義理という言葉では片付きそうも無い、丁寧に包装されたモノを握り締めていた。
”バレンタインなんてー!”
そうか!あいつらはチョコに反応している!チョコから発されるカカオ臭を嗅ぎ付けて襲い掛かってるんだ!
俺はすぐさまポケットに手を突っ込み、アノ子に貰った・・・義理とはいえ、その日の宝物のチョコをチェ・ホンマン・ド・チョコラッテに投げつけた。
”む!?チョコの匂い!?”
チェ(略)が俺の投げたチョコに反応し、一瞬動きが止まった。
だが、そのチョコがチロルチョコだと知りスルーしやがった。
チロルチョコでもそのチロルチョコは俺にとって10円どころか1億以上の価値があるんだ!それを・・・!
俺のスピードが元に戻った。元に戻ったという表現は正確ではない。恥も外聞も捨てて暴れウマの鞭みたいになった。
カマイタチがアノ子を飲み込もうとしたその時、俺はチェ(略)の前に立ちはだかった。
「うわぁぁぁぁ!!」
猛烈な竜巻に巻き上げられるかのように俺は抗う術もなくカマイタチに蹂躙されていく。
薄目を開けるのがやっとの中、アノ子がそれを茫然と見つめているのが見えた。
「なにやってんだ!逃げろ!早く!」
元はアノ子に襲い掛かるつもりだったカマイタチは、俺の制服をズタズタに切り刻んでいく。こんな恐ろしい仕打ちをアノ子にするつもりだったのか!
「でも、エジー君が・・・」
アノ子が呟く。少し、涙が出そうになった。だが、これはジャパニーズ・バレンタインの風習。義理チョコを貰った以上果たさねばならない。
いや、例えもらっていなくても俺は駆け出していただろう。アノ子を守るため。でもそんなこと言えないんだ。俺の気持ち、君に伝える勇気はまだ持てない。それに、君には本命のカレがいるんだろう・・・?
「気にするなよ・・・!義理だからさ!これで返したぜ!うおおおぉぉぉ!」
ほぼ全裸に近い状態で俺はカマイタチの逆周りを始めた。
下半身がうまいこと軸になったようで、回転はグングンと増していった。
”ああ、俺が消える!やめろ!やめろぉ!”
チェ(略)が断末魔の叫びを上げる。こいつも、いや、こいつを生み出した男達も、平等に2月14日を迎えたはずだった。
だが、神は非情だ。朝、家を出た途端彼らは2月14日という日から排除されてしまうのだ。まるで今日という1日は前田君や高橋君、黒田さんや松本さんのためにしか存在しないかのように。
いや、俺もその排除されるべき一人なんだ。それを、義理チョコを貰ったってだけで浮かれて・・・!
チェ(略)の叫びが弱弱しくなる中、俺は、泣いていた。
「もう、大丈夫だ・・・俺たちは、仲間だ。昼休みにはみんなで牛乳飲もうぜ。もう、大丈夫だから・・・」
チェ(略)は消滅した。消えゆく最期”ありがとう”と言ってた。俺、お前のこと忘れない。
かろうじてパンツ一枚残った俺は、ちゃっかり南海キャンディーズの山ちゃんカットにされて廊下に倒れていた。
そんな俺を覗き込む一人の影・・・アノ子だ。
「エジー君。。。わたし。。。わたし」
何かを言いかけるアノ子。だが、俺はそれを遮るように言葉を発した。
「義理だって言ったろ。泣きそうな顔してんじゃねーよ。笑ってるほうがいいぜ。ほら、誰かにそれ、渡すんだろ。早く行けよ」
精一杯歯の浮くようなキャラを演じたつもりだった。あれ?ひょっとしてその手に持ってるのはマフラーとかで俺に?とか40%くらい期待してた。
アノ子はいつものようにとびきりの笑顔になった。
「そうだね!ありがとう!じゃあね!」
と走っていってしまった。
これで、いいんだよなぁ。同志達よ。
廊下の隅に落ちていたチロルチョコを拾い、口に入れた。
口の中が切れていたせいか、少しの甘味と血の鉄っぽい味。しょっぱい失恋の味がした。
ってなもんでして、義理を返すのは大変だというのがわかってくれましたかね。
義理をいちいち返すのは面倒くさいってんで断り続けたら誰にも貰えないキャラになりました。
とにかくこの日には無縁でして。
中学時代、好きだった子からの「義理チョコあげようか?」というお誘いも突っぱねたという筋金入りのシャイボーイなもんでして。
もう、義理とか友とか逆とか意味わかんない。
義理チョコ貰ったら義理を返すのが筋。
例えば中学時代の話だとすれば、俺が義理チョコを貰った日、俺たちの学校にチェ・ホンマン・ド・チョコラッテが現れた。
バレンタインに見放された男達の強力な怨恨が意識体として具現化し、恋人の日に浮かれきったボーイズ&ガールズを粛清しようとしていた。
その地獄の底から聴こえてくるかのような怨嗟の声は高速のカマイタチのように周囲を襲う。
あっという間にカマイタチに包まれた2組の谷君は南海キャンディーズの山ちゃんのような髪型にされてしまった。
そのチョコの行き先が注目されていた6組の岡本さんはキューティーハニーの変身シーンみたいになってしまった。それはそれでありがとう。いや、むしろ超ありがとう。
そして今、怨嗟のカマイタチは止まることを知らず、俺の好きな子に照準を定めた。
やめろ!と言うが早いか俺は駆け出した。
アノ子がキューティーハニー・・・アノ子が・・・アノ子が・・・
想像豊かな中学生。アノ子の窮地を考えるだけでスピードが30%落ちた。
そんな俺の苦悩も知らず、カマイタチはアノ子まっしぐら!
その手には・・・義理という言葉では片付きそうも無い、丁寧に包装されたモノを握り締めていた。
”バレンタインなんてー!”
そうか!あいつらはチョコに反応している!チョコから発されるカカオ臭を嗅ぎ付けて襲い掛かってるんだ!
俺はすぐさまポケットに手を突っ込み、アノ子に貰った・・・義理とはいえ、その日の宝物のチョコをチェ・ホンマン・ド・チョコラッテに投げつけた。
”む!?チョコの匂い!?”
チェ(略)が俺の投げたチョコに反応し、一瞬動きが止まった。
だが、そのチョコがチロルチョコだと知りスルーしやがった。
チロルチョコでもそのチロルチョコは俺にとって10円どころか1億以上の価値があるんだ!それを・・・!
俺のスピードが元に戻った。元に戻ったという表現は正確ではない。恥も外聞も捨てて暴れウマの鞭みたいになった。
カマイタチがアノ子を飲み込もうとしたその時、俺はチェ(略)の前に立ちはだかった。
「うわぁぁぁぁ!!」
猛烈な竜巻に巻き上げられるかのように俺は抗う術もなくカマイタチに蹂躙されていく。
薄目を開けるのがやっとの中、アノ子がそれを茫然と見つめているのが見えた。
「なにやってんだ!逃げろ!早く!」
元はアノ子に襲い掛かるつもりだったカマイタチは、俺の制服をズタズタに切り刻んでいく。こんな恐ろしい仕打ちをアノ子にするつもりだったのか!
「でも、エジー君が・・・」
アノ子が呟く。少し、涙が出そうになった。だが、これはジャパニーズ・バレンタインの風習。義理チョコを貰った以上果たさねばならない。
いや、例えもらっていなくても俺は駆け出していただろう。アノ子を守るため。でもそんなこと言えないんだ。俺の気持ち、君に伝える勇気はまだ持てない。それに、君には本命のカレがいるんだろう・・・?
「気にするなよ・・・!義理だからさ!これで返したぜ!うおおおぉぉぉ!」
ほぼ全裸に近い状態で俺はカマイタチの逆周りを始めた。
下半身がうまいこと軸になったようで、回転はグングンと増していった。
”ああ、俺が消える!やめろ!やめろぉ!”
チェ(略)が断末魔の叫びを上げる。こいつも、いや、こいつを生み出した男達も、平等に2月14日を迎えたはずだった。
だが、神は非情だ。朝、家を出た途端彼らは2月14日という日から排除されてしまうのだ。まるで今日という1日は前田君や高橋君、黒田さんや松本さんのためにしか存在しないかのように。
いや、俺もその排除されるべき一人なんだ。それを、義理チョコを貰ったってだけで浮かれて・・・!
チェ(略)の叫びが弱弱しくなる中、俺は、泣いていた。
「もう、大丈夫だ・・・俺たちは、仲間だ。昼休みにはみんなで牛乳飲もうぜ。もう、大丈夫だから・・・」
チェ(略)は消滅した。消えゆく最期”ありがとう”と言ってた。俺、お前のこと忘れない。
かろうじてパンツ一枚残った俺は、ちゃっかり南海キャンディーズの山ちゃんカットにされて廊下に倒れていた。
そんな俺を覗き込む一人の影・・・アノ子だ。
「エジー君。。。わたし。。。わたし」
何かを言いかけるアノ子。だが、俺はそれを遮るように言葉を発した。
「義理だって言ったろ。泣きそうな顔してんじゃねーよ。笑ってるほうがいいぜ。ほら、誰かにそれ、渡すんだろ。早く行けよ」
精一杯歯の浮くようなキャラを演じたつもりだった。あれ?ひょっとしてその手に持ってるのはマフラーとかで俺に?とか40%くらい期待してた。
アノ子はいつものようにとびきりの笑顔になった。
「そうだね!ありがとう!じゃあね!」
と走っていってしまった。
これで、いいんだよなぁ。同志達よ。
廊下の隅に落ちていたチロルチョコを拾い、口に入れた。
口の中が切れていたせいか、少しの甘味と血の鉄っぽい味。しょっぱい失恋の味がした。
ってなもんでして、義理を返すのは大変だというのがわかってくれましたかね。
義理をいちいち返すのは面倒くさいってんで断り続けたら誰にも貰えないキャラになりました。
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無題
今更ながら初カキコしま~す♪。エジさん、ブログ公開おめでとうございます^^♪
ちょっとした短編小説のような感じで読ませていただきました^^。
この話。。。実話なの?w。情景が脳裏に浮かんでとても面白かった?・・・面白く読んではいけない内容だったのかしら^^;。
エジさんって比喩の使いかたがスッゴィ!。これを機会に出版社に売り込みをかけてみる?。ベストセラーをゲットできるかも^^b。
ちょっときになる表現も・・・「下半身がうまいこと軸になったようで、回転はグングンと増していった」って・・・w。変な事想像しているのは私だけ??^^;
誰にも貰えないキャラになってしまったのですね><;。では”私から熱ーーーい(*´ω`)・^* )CнЦ♪。ん??イランって?w
ちょっとした短編小説のような感じで読ませていただきました^^。
この話。。。実話なの?w。情景が脳裏に浮かんでとても面白かった?・・・面白く読んではいけない内容だったのかしら^^;。
エジさんって比喩の使いかたがスッゴィ!。これを機会に出版社に売り込みをかけてみる?。ベストセラーをゲットできるかも^^b。
ちょっときになる表現も・・・「下半身がうまいこと軸になったようで、回転はグングンと増していった」って・・・w。変な事想像しているのは私だけ??^^;
誰にも貰えないキャラになってしまったのですね><;。では”私から熱ーーーい(*´ω`)・^* )CнЦ♪。ん??イランって?w